目指せ!脱会計脳 「書評」ドラッカーと会計の話をしよう①
西園寺という登場人物が、ドラッカーから学んだ会計学の知識を活かして、出会う人々が抱える経営課題を見つけ出し解決していく物語。機内を舞台として話が展開されていく物語形式で、読み物としても面白く、非常にためになる一冊。
【目次】
- 利益は幻想!? 利益よりキャッシュフロー
- どんな業種であれ、売れる商品は全体の10%
- コストの90%は無駄に使われる
- 感想
利益は幻想!? 利益よりキャッシュフロー
「例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。」
本書に記載されていたドラッカーの著書からの引用。
会計上で計算される利益とは、会社の過去の業績を会計期間毎に区切って計算された「期間利益」であり、この利益を追求すると近視眼的な経営に陥る可能性が高くなる。その上、利益を水増しするために、仮払い精算を次の期に回したり、減価償却費を少なめに計算したり、在庫の金額を水増しすることによって簡単に利益を操作できてしまう。
もし、利益をベースにして会社の過去の業績をつかみたいなら、その会社の数会計期間のデータを集めその推移を分析する必要がある。
しかし、そんな過去の利益よりも大切なのが、キャッシュフロー。
実際、「投資の神様」とも言われているウォーレンバフェットもキャッシュフローを重視している。なぜ、利益よりもキャッシュフローの方が重要なのか? それは、「新たなキャッシュフローを生み出すこと」=「新たな価値の創造」だからである。
どんな業種であれ、売れる商品は全体の10%
ドラッカーは、商品をその寿命にあわせて11の類型に分類している。分類方法は、以下の通り。
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①今日の主力製品
→現段階では、常に大きな売上を占めているが、これから先は売上が減っていく運命にある製品。
②明日の主力製品
→特に宣伝をしていなくても売上、利益が多い製品。コストをかけなくても売れる商品だが、最も力を注ぐべき商品はこの型に分類される商品。どんな企業でも少なくとも1つこれは必要。
③生産的特殊製品
④開発製品
→開発されたばかりで、製品リストにも載ってないような製品。未知数だが、会社の新陳代謝を続けるために必要。
⑤失敗製品
その名の通り問題のある製品。
⑥昨日の主力製品
→売上多いが利益は少ない。売上が多いため広告を強化したり、値段の引き下げを行うことによって、売上の割には利益が少なくなってしまう。
⑦手直し用製品
⑧仮の特殊製品
⑨非生産的特殊製品
⑩独善的製品
→経営者のこだわりによって、コストが水増ししている製品。
⑪シンデレラ製品あるいは睡眠製品
→本来ならよく売れるはずなのに、利益率が低いという理由で積極的に売ろうとしない製品。
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サブタイトルにもあるように、売れる製品は全体の10%。それぞれの製品(商品)が上記11つの内どこに分類されるのか考え、コストをかけるべき製品を把握することが大切。
*③生産的特殊製品 ⑦手直し用製品
⑧仮の特殊製品 ⑨非生産的特殊製品
の4つに関しては、本書で説明がなかったため、当ブログでも説明は割愛させていただきます。
コストの90%は無駄に使われる。
人件費、器具備品日、電気水道費、家賃などなど様々なコストが企業には存在し、挙げだすと枚挙に遑がない。経営者の中には、利益を上げようとしてコストをかけ続ける人もいるかもしれない。しかし、売上とコストは対応していない。言い換えれば、コストを増やしたからと言って売上が伸びる訳ではない。
では、どのようなコスト(お金)の使い方をするべきか?
↓↓↓
コスト(お金)は目標を実現するために、利益を生むような使い方をしなければならない。
これは、会社だけでなく個人にも当てはまる。
コスト(お金)の使い方をより具体的に説明すると…
管理可能な支出(設備維持費やリース料など確実に支払わなくてはいけない支出以外の支出)の内、価値を生まない浪費的な活動に使われているコストを削減する必要がある。
なんと、「投資」も「管理可能な支出」に含める! 投資も支出もキャッシュが出ていくという点でなんら変わりはない。
ここで気をつけないといけないことは、
「短期の利益を捻出するために支出を削減することは、将来のキャッシュフローを放棄することにほかならない」
本書より引用
例えば、人件費や電気水道代を切り詰めすぎるあまり、従業員のモチベーションが下がり退職者がでてきてしまえば、それは長期的な利益の損失に他ならない。
無駄なコストを見つけるためのツール 「ABC原価計算」
「ABC原価計算」はハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプランが1980年に提唱した原価計算方法。製品を仕入れてから消費者に届くまでのプロセス全体を製品のコストの1部としてとらえる。例えば、工場で製品を製造する場合、工場でかかったコストだけを原価として考えるのでなく、保管・検査・出荷などの全てのプロセスを対象にして原価を計算し、コストを可視化させる。
どの工程にどれだけのコストがかかっているのかを把握することは大切だが、製品(商品)の価格設定をする時に、「値段は、原価の5倍」といったようなコストを意識しすぎた価格設定を行ってはいけない。
価格決めるのは消費者である。
[感想]
本書の前半部分で1番衝撃的だったのは、「投資」=「管理可能な支出」と見なしていたことだ。今まで投資と支出は違うものという認識が自分の中であったが、よくよく考えると本書でも述べられている通り、投資も消費もキャッシュの流出という点では何ら変わりがない。むしろ、投資と消費は違うものという認識が無駄な投資を生み出してしまうのではないだろうか?
②へ続く〜