投資の神様 バフェットの勝利の方程式
[書評] 「バフェットの銘柄選択術」を読んで〜
投資の神様と言われているウォーレン・バフェット氏の投資術について、例を用いながら分かりやすく解説している一冊。最終章には、バフェット流投資のためのワークシートもついているので、銘柄選びにも役立つ。
[目次]
- 本書で使われている財務諸表一覧
- バフェットの言う優良企業とは?
- バフェットの勝利の方程式
- まとめ・感想
本書で使われる主な財務指標 一覧
①1株当たりの利益(EPS)
→ 税引利益/発行済株式数
②1株当たり純資産(BPS)
→ 株主資本/発行済株式数
③株価純資産倍率(PBR)
→ 株価/1株当たり純資産(BPS)
→ 税引利益/株主資本
⑤株価収益率(PER)
→ 株価/1株当たり利益(EPS)
⑥益利回り
→ 1株当たりの利益(EPS)/株価
⑦直利
→ 毎期の1株当たりの利益/購入株価
バフェットの言う優良企業とは?
コモディティ型企業 VS 消費者独占型企業
バフェットは、事業のファンダメンタルズをベースにして、企業を大きく2種類に分類している。
その2種類とは…
コモディティ型企業と消費者独占型企業
バフェットが重視するのは、この2種類の企業群の内、消費者独占型企業に分類される企業である。
では、コモディティ型企業と消費者独占型企業にはそれぞれどんな特徴があるのだろうか?
コモディティ型企業———————-
~魅力のない企業群
コモディティ型企業とは、「価格」がそのサービスや商品の選択基準になるような事業を展開している企業のことである。
例としては、紙・パルプ、石油・天然ガス
穀物生産など。
このような事業を展開している企業は、生き残るために「低価格」を追求し続ける必要があり、利幅が小さく長期的に成長し続けるのは難しい。よって、長期投資家にとっては、良い投資先とは言い難い。
コモディティ型企業の特徴
・売上高利益率と在庫回転率が低い
・ROEが低い
・競争相手が多数いて、ブランド価値がない
・利益が不安定
・利益の設備稼働率に対する依存が大きい
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消費者独占型企業—————————
~バフェットの富の源
消費者独占型企業とは、バフェットが「有料ブリッジ」と例えるように、その会社から消費者が買わざるを得ないような商品やサービスを提供している企業のことである。
補足になるが、「消費者独占」という考え方は、1938年にローレンス・N・ブルームバーグという当時学生だった若者が、消費者独占力を持つ企業の投資価値に関する博士論文を書いたのが始まりである。彼は、暖簾(のれん)という無形資産が消費者独占力をもたらすと考え、バフェットも彼のその考え方を重視している。
消費者独占型企業の特徴
・ROEが高い
・EPSが力強く増加基調 (過去10年間)
→ずっと増加し続ける必要はなく、マイナス年があったとしても増加『基調』であればOK
・多額の負債を抱えていない
・内部留保利益を再投資している
・内部留保利益を自由に使えるか
→将来、その内部留保の再投資によって、株価が上がる可能性がある。
・インフレを価格に転嫁できる。
→消費者独占型企業は、価格を上げても需要減の心配は無いため、安心して価格を上げられる。
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このように、コモディティ型企業と消費者独占型企業について述べてきたが、バフェットは、消費者独占型企業をさらに以下の4つのタイプに分類している。
①長期使用や保存が難しく強いブランド力を持ち、販売者が扱わざるを得ない製品を作る事業
→ コカ・コーラのような耐久性が乏しく、消費者が次から次へと購入するようなブランド力のある製品を扱っている企業。
本書では、このような製品を見つけるために、コンビニへやドラッグストアへ行くことをオススメしている。ほとんどのコンビニやドラッグストアに並んでいる商品=ブランド力があり販売業者が扱わざるを得ない商品であるため、①のタイプの消費者独占型企業を見つける助けとなる。
②他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざるを得ないコミュニケーション関連事業
→メーカーと消費者を繋ぐのに欠かせない媒体を有している企業がこのタイプに分類される。
③企業や個人が日常的に使用し続けるを得ないサービスを提供する事業
→アメックス(クレジットカード会社)や、害虫駆除、清掃請負、芝刈、家政婦派遣などのサービスを展開しているサービスマスターが、本書では例として挙げられている。
④宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力を持っている小売事業
バフェットの勝利の方程式
優良企業の見つけ方~
①収益は安定して成長しているか?
バフェットは、EPSが債権の額面に対する利子に相当するとかんがえており、過去10年間のEPSが増加基調になっているかどうかを企業の収益性を図る判断基準の1つとしている。
たとえ、過去に落ち込みがあったとしてもそれは一時的で増加『基調』であれば問題ない。過去10年間EPSが安定的に増加しており、直近で利益が落ち込んでいる企業は、バフェットにとって有力な投資対象候補となる。 また、バフェットは、EPSを基準にして株価収益率を計算している。本書の例を用いると、株価が5.22ドルでEPSが0.36ドルであれば、投資額に対する直利は6.89%(0.36÷5.22)となる。
EPS成長率の計算方法
1990年のEPS 1.18ドル
2000年のEPS3.70ドル
この場合の過去10年間のEPS成長率
計算方法~
まず、2000年のEPSが1990年の何倍になったかを求め、そこで出た値の10乗根を計算し、そこから1を差し引く。
(3.70/1.18)^(1/10)-1
これを計算すると0.121となる。
iPhoneの計算機を使った計算方法としては、まず、iPhoneの計算機アプリを開き、横向きにする。そして、3.70÷1.18を計算する。すると、3.135~という数字が出てくるので、
y√xと記されている記号をタップし、10という数字を入力。最後に=をタップすると1.121~という数字が得られるので、そこから1を差し引くと、0.121となる。
②ROEは15%以上か?
ROEは債権の額面に対する利率みたいなもの。ROEは、一時的な伸びではなく、過去数年間に渡って、継続的に高いROEを維持しているのが望ましい。
③自社株買いに積極的か?
自社株買いは、企業のEPSを増加させ、自社株買いに応じなかった投資家の持ち株比率を上昇させる。株価上昇にもつながる効果があるため、株主にとってはいい事づくし。
ただし、あたかもEPSが成長しているように見せかけるため、すなわち業績悪化をごまかす手段として利用されていないか注意する必要がある。 EPSの成長率だけでなく、税引利益総額の成長率も併せてチェックすることが重要。
④強固な財務基盤を有しているか?
一般的に、消費者独占力のある企業は利益率が高く、長期負債は極めて少ない。
財務基盤を評価する指標として、デットエクイティ・レシオ(有利子負債/株主資本)がよく使われるが、企業が株主資本を取り崩して債務を返済することは滅多にないため、あまり役に立たない。
企業の債務返済能力を測るのなら、
長期負債/税引利益倍率を目安にするべき。
長期負債/税引利益倍率=
今期の長期負債/今期の税引利益
で算出することができる。
まとめ・感想
まとめると、バフェットが投資対象とする企業は以下の通りである。
・消費者独占型企業
・EPSやROEが高水準&継続的に上昇
・長期負債が極めて少ない
・内部留保を有効活用している
本書では、銘柄選びのためのワークシートだけでなく、実例を用いたケーススタディも用意されているため、実際にどのようにして優良企業を探し出せば良いのかイメージしやすい構成となっている。銘柄選定の際には参考にしたいと思える良書。